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1.食中毒を予防するには
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■調理前
(1)調理の前は必ず手を洗いましょう
(2)食材は、生のまま食べる野菜や果実はもちろん、魚介類も流水でしっかりよく洗いましょう。
(3)冷凍された食品は、使う分だけを解凍し、解凍したらすぐに調理しましょう。
(4)買いものから帰ったら表示を確認して、冷蔵や冷凍の必要な食品は、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入
れましょう。
(5)食品にはその種類に応じた適切な保存方法があります。何でも冷蔵庫に入れて冷やしておけば良
い、というわけではありません。
■調理中
(1)包丁やまな板を使うときは、生野菜などの加熱をしない食品を先に切り、生の肉や魚介類はあと
で切るようにしましょう。
(2)生の肉や魚介類に使った包丁やまな板と、調理済みの食品がふれないようにしましょう。
(3)新鮮な生の肉の表面や内臓にも食中毒の原因となる細菌がいることがあります。牛肉、牛レバー、
豚肉、豚レバー、鶏肉など生で食べることは止めましょう。必ず加熱して食べましょう。
(4)加熱する食品は中心まで十分に加熱しましょう。肉の色の変化を目安とすれば、例えばピンク色
(生の肉の色)の部分が見えなくなるまで加熱すると食中毒菌が死滅します。
(5)生の肉や魚介類などを扱った調理器具は、使い終わったらすぐによく洗い、細菌の汚染を広げな
いよう殺菌消毒しましょう。
■調理後
(1)調理した食品は、早めに食べましょう。
(2)食後の食器や調理器具は放置せず、できるだけ早く洗いましょう。
(3)タオルやふきんは、清潔なものを使いましょう。
(4)食器や調理器具を洗ったスポンジやたわしも、使った後すぐに洗剤と流水でよく洗い、乾かしま
しょう。
(5)残った食材や、調理済みの食品は冷温で保存しましょう。冷蔵や冷凍すると、微生物の活動が緩
慢になりますが、死滅することはないので、冷蔵庫を過信せず、食べるときは必ず再加熱しましょ
う。
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2. 食中毒の原因となる細菌はどこにいる?
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食中毒の原因となる細菌の多くは、牛や豚、鶏等、動物の腸の中にいます。排泄物を介して、私たち
が食べる食肉や野菜、飲料水などを汚染します 。細菌はとても小さく臭いもしないため、食品に細
菌がついているかどうかは、見た目ではわかりません。
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3.食中毒になるとどうなるの?
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食中毒菌がついた食品を食べたり、増えた食中毒菌が作った毒素の含まれた食品を食べた後、しばら
く間を置いて、おなかが痛くなる、吐き気がする、下痢になる、熱がでるなどの症状がでます。お子
さんやお年寄り、病気のため抵抗力が弱っている方などは、症状が重くなりやすいので気を付けなく
てはなりません。
■黄色ブドウ球菌
人や動物に常在し、手指等に傷があると感染して化膿巣を作るため、食品取扱者を介した食品汚染が
極めて高い菌です。食品中で食中毒を発症させる毒素(エンテロトキシン)を産生します。塩濃度が高
い環境でも増殖し毒素が産生されるので、原因食品は多岐にわたります。潜伏期間は平均3時間と短
く、悪心、嘔吐、下痢などの症状がみられます。菌自体の耐熱性は高くないものの、毒素は100℃30
分の加熱でも無毒化されないため、手指や調理器具の洗浄殺菌や、低温保存などの対策が効果的です。
■サルモネラ
人獣共通感染症の菌で、家畜や家きんの中では、鶏の保菌率が高い細菌です。感染後、12〜48時間と
比較的短い潜伏期間で、腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状がでます。慢性の保菌者になると無症状
のまま長期間にわたり便や尿中から菌が排出され、感染が広がることもあるようです。対策として、
食肉や卵は充分に加熱すること(中心部を75℃で、1分以上)、卵の生食は新鮮なものに限ること、調
理器具や手指を介した二次汚染に注意することなど等が挙げられます。
■カンピロバクター
家畜・家きん類の腸管内に生息しています。感染後の潜伏期間は1〜7日で 、100個程度の比較的少
ない菌数で腸炎を発症して、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便等の症状を起こします。
感染後合併症を起こすと、ギラン・バレー症候群に進行することもあります。 菌は冷蔵または冷凍
温度下でも長期間生存しますが、食肉の場合65℃で数分間加熱することで死滅します。
※ギラン・バレー症候群
筋肉を動かす運動神経の障害のため、急に手や足に力が入らなくなる病気です。手足のしびれ感もし
ばしば伴います。多くの場合(約7割程度)風邪を引いたり下痢をしたりなどの感染の後1〜2週して
症状がはじまります。症状は2〜4週以内にピークとなり、その後は改善していきます。
■腸管出血性大腸菌(O157等)
動物の腸管内に生息しています。わずか2〜9個の菌でも感染し、平均4〜8日間の潜伏期間を経て、
腸の中で赤痢菌と類似の毒素(ベロ毒素)が作られます。ベロ毒素は、激しい腹痛と新鮮血を伴う水様
の下痢を引き起こします。若齢者及び高齢者では、重症化する可能性が高く、溶血性尿毒症症候群
(HUS)を併発して、意識障害や死に至ることもあります。加熱や消毒により死滅するため、食肉は中
心部まで十分加熱する(75℃で1分以上)、野菜類はよく洗浄する、調理器具の消毒などの対策を徹底
することで予防できます。
※溶血性尿毒症症候群(Hemolytic uremic syndrome :HUS)
溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を3主徴とする症候群で、腸管出血性大腸菌感染症に引き続い
て発症することが多く見られます。
■腸炎ビブリオ
海に生息する好塩性細菌で、食中毒の原因食品のほとんどが生鮮魚介類に関連しています。潜伏期間
は12時間前後で、腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状がみられます。2〜3%の食塩濃度を好み、室
温で速やかに増殖しますが、食塩がないと死滅するので、真水で良く洗うと菌を減らすことができま
す。
増殖が速いので、短時間でも冷蔵庫に保管する必要があります。熱に弱く、食材を中心部70℃で1
分以上加熱すれば死滅します。
食中毒予防のポイント
http://www.fsc.go.jp/sonota/e1_shokutyudoku.html
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食中毒に関するQ&A
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Q1 生のお肉を食べてはいけないのはなぜですか?
A1 家畜は、健康な状態において腸管内などに腸管出血性大腸菌などの食中毒菌を持っていることが
知られており、鶏などと同様にカンピロバクターやサルモネラなどを保有している場合もあります。
そのため、生肉は食中毒菌に汚染されている可能性があります。
食中毒を予防するために、お肉やレバーはどの部位でも生で食べないようにしましょう。
Q2 食中毒にならないために、食材をどのくらい加熱すればよいですか?
A2 食材についている腸管出血性大腸菌やサルモネラは、75℃で1分以上、カンピロバクターは65℃
で数分間の加熱で死滅します。加熱調理(中心部を75℃で1分以上)を行えば、菌を死滅させることが
できます。
目安として、お肉は中心部のピンク色(生の肉の色)が変わるまで、しっかり加熱しましょう。
Q3 電子レンジの加熱でも殺菌できるのですか?
A3 電子レンジは、加熱でムラが出来やすいので過信しないようにしましょう。電子レンジで加熱す
る場合は、お肉はピンク色(生の肉の色)の部分がなくなるまで加熱しましょう。
電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにく
い物は、時々かき混ぜることも必要です。食べ物を単に温めるだけでは加熱が不十分で、菌が死滅し
ないことがあるので注意してください。
Q4 まな板やフキンをしっかり洗うようにと言われますが、どのように洗えばよいのですか?
A4 まな板は、使ったらすぐに洗浄剤でしっかり洗い、熱湯(85℃以上)または次亜塩素酸ナトリウム
製剤((台所用液体漂白剤(5%濃度)なら250倍に希釈)で消毒しましょう。
フキンやスポンジは、菌が増殖しやすいので、十分に煮沸消毒をしたり台所用液体漂白剤に漬け置き
の後、乾燥させることを心がけましょう。
Q5 卵は室温で保管しても大丈夫ですか?
A5 鶏卵は冷蔵庫(10℃以下)で保管し、生で食べる場合は新鮮なものに限りましょう。食品衛生法
(食品衛生法に基づく鶏卵の表示基準(厚生省通知(平成10年11月25日第1674号)))においては、生
食用の鶏卵について、卵の包装販売者に対して「10℃以下で保存することが望ましい」旨を表示する
よう義務が課されています。
なお、冷蔵庫のドアポケットの卵入れは、温度変化が大きいことにより卵が結露するなど痛む場合も
あります。庫内の温度変化の少ない場所で購入した時の容器包装に入れたまま保存するようにしまし
ょう。
Q6 腸管出血性大腸菌(O157)は、他の食中毒より重症になりやすいのですか?
A6 腸管出血性大腸菌に感染すると、腸の中で毒力の強いベロ毒素を作り出し、激しい腹痛と大量の
新鮮血を伴う血便などの重篤な症状が発症します 。さらに重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)な
どの合併症を引き起こすのが特徴です。HUSは腸管出血性大腸菌感染者の約10〜15%に発症し、HUS
発症者の約1〜5%が死亡するとされています。お子さんやお年寄りは、重症化してHUSを発症しやす
いので特に注意が必要です。
※溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome :HUS)
溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を3主徴とする症候群で、腸管出血性大腸菌感染症に引き続い
て発症することが多く見られます。
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2.「食中毒の多い季節になりました」(食品安全委員会 石井委員)
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梅雨に入ると、湿度が高く、適度な温度で細菌が繁殖しやすく、適切に対処しないと食中毒のリスク
が高くなります。日々の生活の中で食中毒のリスクを知り、食品を取り扱いしましょう。
<食中毒の原因>
食中毒を起こすことで知られる細菌やウイルスは大腸菌、サルモネラ、ノロウイルスなどがありま
す。
これらは、適度な水分、栄養分、温度で増えます。私たちの体に一定以上の量になると食中毒症状を
起こします。食中毒へのかかりやすさは人によって異なります。抵抗力の弱い、幼児、高齢者には特
段の注意が必要です。食中毒予防の大原則は細菌やウイルスを「つけない、増やさない、やっつける」
です。
<加熱で菌は死滅する>
食中毒を起こす細菌では、カンピロバクターは65℃数分以上で、腸管出血性大腸菌、サルモネラは
75℃1分以上で、ノロウイルスは85℃1分以上の加熱で死滅します。食品を加熱することは、食中毒
予防に大きな力があります。しかし、加熱調理したとしても食中毒が起こっています。加熱する温度
は100℃以上ですが、食品の中心温度はそれほど上がりません。たとえば、加熱できたと判断するピ
ンク色の肉の色が変化する温度は60〜70℃です。中心部のピンクの部分がなくなるまで十分に加熱し
ましょう。
特にミンチ肉などのように内部に肉の塊の表面だった部分が混ざっているものは十分に加熱しましょ
う。そのためには、熱が伝わりやすいように厚さを工夫しましょう。なお、食品の加熱だけでなく、
ふきんや調理器具を熱湯消毒すると効果的です。
<調理中のリスク>
調理中のリスクには、調理する人の手にもあります。人の手には様々な細菌が付着しているので、
調理の前後にはよく手を洗いましょう。また、リスクは調理器具の使い方にもあります。まな板の使
い方での注意点は、肉や魚を切った後にはまな板に細菌などが付くので、その後に野菜などを切ると
きにはまな板や包丁を洗って付着した菌を除くようにしましょう。なお、まな板を分けて使用数工夫
も効果的です。
<保存中のリスク>
保存中のリスクとして、一度加熱調理した食品でも、常温や冷温での保存中に細菌が増殖する場合
があります。できるだけ温度の低いところで保存し、食べる前に再加熱しましょう。
また、余分な水分で細菌が増殖しやすくなることを防ぐために弁当は熱いままふたをしないようにし
ましょう。